#10【クロノスの商人が教える】 新米トレーダーは我慢できず、絶えず売り買いをする

クロノスの商人(@ChronoMerchant)です。この記事では、新人トレーダー物語風にトレードの流れや注意点などを書いています。

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新米トレーダーは我慢できず、絶えず売り買いをする。金持ちトレーダーは我慢強く、買いシグナルを待つ。

 

株式取引をするために一日有給を取った新米トレーダーは、うきうきしながら株式市場が開く2時間前に起き出した。目覚ましに濃いコーヒーをいれ、パソコンにログインするとアジア市場と欧州市場の動きをチェックした。

どの市場でも主要な指数は0・5%ほど上昇している。彼の保有するSRRSは時間外取引では9・70ドルまで上がっていた。

 

彼はにんまりと笑顔になった。

たった一日で350ドルも儲かったぞ。おれって投資の才能があるじゃないか……。しかし、まずはやらなきゃならないことがある。

自分が適度と思えるようなポジションにまで保有株数を減らし、それから利益の上がるシステムに沿った取引プランを立てなくちゃならない。

株式市場が開き、彼は保有するSRRS株を9・75ドルで500株売却した。これで200ドルのキャピタルゲインが得られ、手数料が往復それぞれ10ドルで合計マイナス20ドルという結果になった

 

 

生まれて初めての株取引で180ドルの利益が得られたことは、かなり嬉しいことだった。それに、決算発表に向けて、プライスレンジ上限の12ドルを目指して、まだ500株保有している。

ポジションが5,000ドル未満になったということで、1万ドル近くの株式を保有するのに比べると彼はかなり安堵の念を感じた。

1,000株保有していたときのストレスや、心臓がバクバク鳴る感覚を今は感じていなかった。一度の取引について500株、もしくは5,000ドルというのが彼にとって適切なサイズなのだと彼は結論した。

しかしながら、経験を積んで口座残高が増えれば、もっと大きなサイズでも安心して取引できるようになるのではないかと彼は願っていた。それについては時がたてばわかるだろう。

 

 

彼は、まるで投資するための資金を口座に取り戻したような、そんな気分だった。彼の口座はマージン口座だったので、その金で今日また取引することができた。

キャッシュ口座の場合だと取引の決済が確定するまで3日間待たなければならない。

(【マージン口座とキャッシュ口座】海外の証券会社の口座区分で、マージン口座は日本の信用口座に近い。米国のマージン口座では、レバレッジは最大で2倍。)

彼は500株、約5,000ドルのポジションでかなりの余裕を感じたので、これが取引プランに沿ったサイズということだろう

もし株価が50ドルの銘柄であれば100株を取引するということになる。彼はまた株価のボラティリティも考慮しなければいけないかもしれないないと考えついた。

彼は安定的で上昇トレンドにある銘柄を取引したかった。一日の取引レンジが2%から5%におさまる銘柄がよかったのだ。彼はパソコンに向かいSRRSの過去の値動きをチェックした。

SRRSは実に値動きの激しい銘柄だった。平均してかろうじて5%におさまる動き幅だ。このこと自体は新米トレーダーにとってストレスになるものではなかった。

 

 

とにもかくにも値動きのある銘柄を取引したいに決まっているからだ。トレンドの方向性が見て取れ、決済したときに取引手数料をカバーしてなお利益が上がるような、最低限のボラティリティは必要なのだ。

彼は自分自身の取引システムを確立しようと考え始めた。CNBCを背後に流し、パソコンの画面にはリアルタイム株価ストリーマーを点滅させながら、彼は腕組みをして考え始めた。

ポートフォリオを見ると、彼の株価は今9・92ドルになっており、52週間での最高値を更新していた。彼は嬉しくなった。

株価が上昇する勝ち組銘柄を選び、良いタイミングで参入できたことにかなりの満足を感じた。だがしかし……と彼は考えた。

正確なところ、なぜ自分はあの株価で買ったのだろう?短期的な支持線にあったから?単なる直感?そもそも本当に自分は取引システムなんて確たるものを持っていたのだろうか?自分は単にその場その場の考えで取引するだけのトレーダーなのだろうか?

 

 

彼は浮かんできたこれらの問いに答えを見つけることができなかった。と同時に、口座にある5,000ドルで早く取引したくてたまらない欲求を感じていた。彼はウォッチリストに入れた銘柄をチェックした。

株式市場全体は上げ基調で、主要な指標は1%近く上昇していた。そして、DMYというSRRSへ商品供給している会社の株価は52週間での最高値を更新して4・90ドルになっていた。

考える間もなかった

彼は突発的にDMY株を4・91ドルで1,000株購入した。株価はそこから4・95ドルへと上昇し、そこでもみ合うと反転して4・92ドルになった。彼は強い上昇基調が続くことを祈った。

売買注文の気配を見ている間、彼は自問自答した。株価は買値4・92ドル/売値4・93ドルで数分間もみ合っている。おれは何をしているんだ?出口戦略なんてないぞ。それどころか、なぜ買ったのかさえわからない。彼はその時は理解していなかったが、彼の行動の動機というのは欲望だった。

それは近い将来、彼にひどい決断をさせることになるが、その時はとにかく彼は混乱するばかりだった。多分、取引時間中に取引プランを作ろうというのが、あまりうまい考えじゃなかったんじゃないか。

ディスプレイを悶々と30分間も見つめてたものの、株価は動かないままで、彼はとうとう売ることを決めた。1,000株を4・92ドルで売却したのだった。

 

 

やれやれ、損しなかったのは良かった……。

しかしよく見ると、彼は口座残高が10ドル減っていることに気づいた。彼は取引で10ドル儲けたのだが、売買手数料で20ドル支払っているのだった。

なんてバカな取引をしたんだと彼は思った。しかも、取引プランを練ろうとしている最中にこんなことをしてしまったなんて、本当に愚かなことなんじゃないだろうか。

彼は金持ちトレーダーに電話することにした。

金持ちトレーダーがいつものように楽しげな声で電話に応対すると、新米トレーダーは時間を無駄にせず、要件を切り出した。

 

 

「今まで、自分でもなぜかわからないまま取引したことはありますか?」

「ああ、あるよ。私がもっと若かった頃だな。アツくなってね、賭け金がつりあがるとアドレナリンがほとばしって、全く、バカなことをしたと後悔したものだよ」

「取引しすぎてしまうとか、突発的に注文を入れてしまうとか、なぜ起きるんでしょうか?」

「ふーむ、その問題は幾つか異なる原因によって引き起こされるんじゃないかな。

  1. 取引計画が明確になっていない。
  2. 退屈して刺激を求めてしまう。
  3. 高慢になり、自分が他のトレーダーより頭が良いんだと思って取引してしまう。

……とかね」

「じゃ、どうやったらそれを防げるんですか?」

「それは、お金を儲けるためだけに取引をするのであって、娯楽のためだとか自分自身の考えを正しいと証明するために取引をするのではない、ということなんじゃないかな。

利益が上がる取引というのは、実はほとんどの時間、退屈なものだ。取引する前の段階で、いつ何をするかわかっているということは、取引の楽しさをほとんど失わせてしまう。

もし、市場に対して優位に立てるようなシステムに則って君が取引をしていて、かつそれをどう運用するか正確な取引プランがあるのだとしたら、突発的に取引するなんてのはありえないだろう。

君は買いシグナルと売りシグナルが出るのを待つだけだ。もし自分のその場の考えだけで取引をして、その損失に苦しむとしたら、いずれ君にもわかるだろう。

長期的にお金を儲けるのは君の取引システムに基づくものであって、君のエゴに基づいた取引は短期的に損失をもたらすものだということを。

システムを運用するのであって、君のその場の考えで取引するのではないのだ」

「なるほど。もっともです」

「市場が閉まっている間に調査とプラン作りをしなさい。市場が開いたら君のシステムを運用するんだ」

「ふーむ、学ぶことはまだまだありそうですね。今日はありがとうございました」

「経験はもっとも偉大な先生だよ」

そう金持ちトレーダーは答えた。

 

新米トレーダーは、きっちりとプランを立てるまでは取引しないのが一番だと心に決めた。