#7【クロノスの商人が教える】 新米トレーダーは自分が正しいのだとむきになって思い込む

この記事では、新人トレーダー物語風にトレードの流れや注意点などを書いています。

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新米トレーダーは自分が正しいのだとむきになって思い込む。金持ちトレーダーは間違ったとき、すぐに認める。

新米トレーダーはうつらうつらと船をこいでディスプレイに頭をぶつけた。彼はSRRS株をすでに1か月以上、保有しており、株価は極めていい動きをしている。10・58ドルという最高値を更新したあとで、10・03ドルに落ち着いていた。

彼はこの結果にかなり満足しており、最初に予想したとおり12ドルに達すると自信を持っていた。彼はまだ完全に目が覚めていないので、幾分のろのろとディスプレイに向かった。何度かクリックした後、彼は自分の証券口座にログインしていた。

リアルタイム株価ストリーマーを立ち上げ、コーヒーを入れようと立ち上がった時だった。

……9・25ドル

 

彼は胃がひっくり返るかと思った。取引開始前の株価表示が9・25ドルになっている!目がパッと覚めて、コーヒーのことも忘れてしまった。

「9・25ドルだって?いったい……」

彼は素早く計算をした。彼は一時、615ドルの含み益があったのが、今や50ドルのマイナス!?利益が蒸発した。

──たった一晩のうちに。

 

インターネットを検索してみると、SRRSのライバル会社がSRRSよりも優れた電子機器装置を発表したことがわかった

アナリストによれば、その製品は4か月以内に発売開始されると見られ、そうなると一年以内にSRRSから20%のシェアを奪うだろうと予想されるとのことだった。

新米トレーダーはどーんと気持ちがふさいだが、彼のエゴが取引プラン上に覆いかぶさってきた。一体どうしたらいいんだ?心配するな、と彼のエゴはなぐさめを言った。

お前は正しいんだ……そのまま保有しろ。

株価は戻るさ……他の会社の製品がオリジナルより良いわけないじゃないか。

──他の投資家が反応しただけの一時的でごく自然な値動きさ……。

 

そうだ、自分は正しい。新米トレーダーは自分に言い聞かせた。大きな利益を皮算用していたのに、彼のエゴがこの小さな損失を受け入れるはずがなかった。

彼はここ数か月間、一生懸命勉強してきたことが全てムダになったような気がして、考えたくなかった

このムダになった時間、努力とフラストレーション……何の意味があったのか?そうする価値なんてあったのか?売らなければ、損はしない

まだ間違いと決まったわけじゃないんだ。もう一度、株価が上昇するまで辛抱強く我慢すればいいんだ。そうしたら、今度こそ売ろう。ともかくも、それが彼のエゴが出した答えだった。

 

一方で、彼の取引プランは極めてシンプルに「売れ」と言っている。新米トレーダーの取引プランは、彼のエゴとは違い、判断は中立的だ。新米トレーダーの合理的な心理に基づいて作られたのだから。

取引プランは新米トレーダーの方法論とシステムのレンズを通して何をするべきか統括するために作り上げられている

それは新米トレーダーを大損害を被ることから守り、あるいは得られるはずの利益をあまりに多く手放してしまうことを防ぐ意味合いで設計されたものだ。

不運なことに、新米トレーダーは彼自身が取引プランよりも頭がいいのだと信じてしまった。株価が5%下げたら売ろうと考えたていたことをかろうじて覚えているだけだ。

 

今や、株価は10%以上下げている。しかし、それでも彼は売る決心がつかないでいた。615ドルという机上の利益が失われるのを見ていたとき、取引プランは彼のボスになっていなかった。

彼はただ含み益をほくほくと見守り、何週間も毎日毎日、自分のポジションを誉めそやしていたのだ。

615ドルは自分のものだ。取り戻さなければ。彼のエゴが100%彼を支配していた。

 

「売るな!値を戻すまで待て。少なくともとんとんになるまで!」

こうして新米トレーダーが頭の中でぐるぐる考えているうちに、株式市場が開いた。彼は株価を凝視した

寄付きは9・30ドル、そして9・20ドルに落ちた。その次の株価は9・18ドル、9・14ドル、9・09ドル。新米トレーダーは吐き気がしてきた。

心臓がバクバク鳴る中で、取り憑かれたように気配値を、株価を、その出来高を見つめている。それらの数字は何か彼に意味しているのだ。しかし、彼は全ての動きが彼の正しさを証明するためのものだと思い込もうとしていた。

株価は反発するに違いないのだ。もちろん、支持線のある9・00ドルまでは下がったとしても仕方ない。

しかし、それを割ることはないだろう。買い手がやってきて価格を支えるはずだ。これが本当の投げ売りだったら、もっと出来高が増えているはずだ。

 

売るべきじゃない。

むしろ買いを入れる絶好のチャンスなんだ。どうして売らなきゃならない?新米トレーダーが自分のエゴで気を落ち着けている間に、彼のお金は刻一刻と蒸発していた。

株価は8・98ドルになった。

彼のポジションはすでにマイナス185ドルになっており、一度の取引で失う額としてはやってはいけない領域へと落ち込みつつあった。

自分の設定したストップロスを尊重できなかったせいで、逆にそれを尊重して取引プランに従って寄り付きで売っていたときに比べると135ドルもよけいに損をしている。

彼はこの辺で反発があるはずだと確信していた。今まさに支持線上にある。幾らなんでも売られすぎだ。買い手が安値拾いに走ってくるはずだ。

SRRS株は9・10ドルへ持ち直したが、たちまち反転してものの数秒で8・80ドルへと急落した。

出来高は急増して普段の一日の取引量にすでに達しており、まるで深い井戸に落ちた石ころのように株価は落ちていった。

 

もはやこの痛みは我慢の限界だった。新米トレーダーは株を売り払った。吐き気がした。彼は完全に意気消沈してしまった。

彼はSRRS株を選んだことと、最初に計画した価格を下回ったときに売らなかったことの両面で失敗したと感じていた。

彼は615ドルほどの利益に何週間もほくほくして喜んだ挙句に275ドルを失ったのだ。

彼はSRRSの株価にへばりついて、毎時間、値動きを眺め、チャートや出来高や価格を解釈して株式運用する優れた投資家にでもなったつもりで、あまりに長い時間を無駄に費やしていた。

彼はどんよりと気分が重くなってしまった。金持ちトレーダーと話したくもなかった。取引をしたいとも思わなかった。負け犬になったような気がした。

そもそも自分の株式投資がうまく行くなんて信じ込んでいた時点でカモにされていたんじゃないだろうか。

 

頭で考えてというより、あまりに落ち込んだ感情のせいで、彼は一連のことが全て失敗であるかのような気分になっていた。

くよくよと何時間も悔やんだ後、彼は再びリアルタイム株価ストリーマーに目をやった。SRRS株は8・49ドルまで下落し、その後8・97ドルまで急反発していた。

しかし、SRRSがリードしていた電子機器の支配的地位が終焉を迎えたのを市場が価格として織り込んだ結果、株価は新たなレンジに入っていた。

決算発表までに株価は回復するのだろうか?それは誰にもわからない。新米トレーダーにはもうどうでもよかった。彼はただ金を儲けたかったのだから。

 

しかし今や、彼は現実にはどんな取引をしても金を失う可能性があるということと、その損失額自体はコントロールできるのだということを真に理解した。

株価が手仕舞いすべき価格、トレイリング・ストップの価格、あるいはストップロスの価格に達したなら、その時点で彼はその取引についてハズしている可能性が高いと機械的に判断するべきなのだということを学んだ。

彼はシグナルを受け入れるべきで、撤退するべきなのだ。彼は、ストップロス注文などは、ある種の保険みたいなものだと考えていた。

そういえば、車の保険を払っておいて、その月に保険を使わなかったからといって半狂乱になることなどない。保険は単に新車を全壊するような破滅的な事故を防ぐために払っておくものなのだ。

ストップロス注文やトレイリング・ストップ注文は、トレンドが反転する見込みがなく、反発を待っている間にどんどん損失が膨らむといった多額の損失から守ってくれる。

 

通常の取引時間中にそれを用いて撤退できれば、利益を残せる可能性だってあるのだ。たとえそうして撤退を強いられ、その後、株価が反転したとしても、その時は単に買い戻せばいいではないか。

何が悪い?彼は不必要に撤退させられるのを防ぐためにストップロス注文の価格帯の設定がなぜ重要なのかが理解できた。

トレイリング・ストップ注文も、トレンドのノイズをやり過ごして利益を最大限にするため、注意深く設定されなければならないだろう。

今回の出来事で大切なことは、新米トレーダーが誰か他の人から教わったのではなく、個人的に大切なレッスンを教わったということだ。

彼は、最小限のコストでこのレッスンを学ぶことができてむしろラッキーだったのだ。

コールオプションを買っていたら、彼の口座の金が全て吹き飛んでいただろうし、最初に買った1,000株をまだ保有していたら、損失は2倍になっていたかもしれない。

275ドルではなく、彼は550ドルの損失を目の当たりにしていたかもしれないのだ。

 

彼はトレーダーとして成長していた。彼は起きたこと、そこから学んだことを通じて物事を考えるようになった。本当のトレーダーに変わりつつあった。

トレーダーらしく考えるようになっていた。あらゆるトレーダーが成功する前にいつかは学ぶレッスンを彼は今回学んだのだ。読んだ書籍、金持ちトレーダーから得た助言、それから彼自身の経験が一体となりつつあった。

彼自身はその時まだ感じていなかったが、彼は実に幸運だったのだ。