#9【クロノスの商人が教える】 新米トレーダーは学ぶことをやめて失敗する

クロノスの商人(@ChronoMerchant)です。この記事では、新人トレーダー物語風にトレードの流れや注意点などを書いています。

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新米トレーダーは学ぶことをやめて失敗する。金持ちトレーダーは市場について学ぶことをやめない。

 

とうとうやったぞ!という高揚感とともに新米トレーダーは目覚めた。自分は優れたトレーダーだ。取引スタイルも確立され、プランもある。

彼は遅い朝食を一緒に取れるかと金持ちトレーダーに電話した。今日は土曜日だ。株式市場は閉まっている。

こんな日にトレーダーは何をするか?リラックスして得た利益を楽しむのだ。二人は会う約束をし、正午前には家庭的なレストランのテーブルで好みの朝食を注文していた。くつろいだ気分でゆったりとおいしい料理を楽しむのだ。

 

「ようやく投資というものがわかりましたよ」

新米トレーダーは卵を食べながら唐突に言った。オレンジジュースを飲んでいた金持ちトレーダーはむせて、もう少しで大笑いして噴出すところだった。

「何がそんなにおかしいんです?」

新米トレーダーは金持ちトレーダーの反応に困惑して尋ねた。これは真剣なビジネスの話なのに!

「うむ、すまんすまん」

ようやく息をついた金持ちトレーダーは言った。

「しかしね、」

そう言って彼はまた笑い出したが、今度はもう少し控えめな笑いだった。

「今までそんなことを言った人は一人もいないよ」

「かなりの調査をしたんです。それから自分の取引スタイルも決めました。いわゆるトレンド追従型です。取引プランも書き上げました」

 

そう言って、金持ちトレーダーに束になった書類を差し出すと、ベーコンを一枚平らげた。金持ちトレーダーは注意深くその書類を眺めると言った。

「これは偉大な第一歩だね」

「第一歩?」

信じられないといった趣でしかめっ面を作ると新米トレーダーは言った。言いながら2枚目のベーコンを平らげる。

「これは、新入生が最初の講義の際に提出するレポートのようなものだよ。もし、君が他の成功したトレーダーと同じだというのなら、君はこの取引システムをテストして、それから必要な調整をしなければならないだろうね」

 

金持ちトレーダーはオレンジジュースをすすった。

「しばらくはうまく行くかもしれない。だが、たいていは市場の変化のために突然うまく行かなくなって、君の資本金は大幅に目減りするハメになる。

システムがそもそも働かなくなることだってある。君はまだ知らないだろうがね。あるいは、強気相場の中でうまく稼げるが、弱気相場ではそれまでの利益を全部放出してしまうかもしれない。

弱気相場でも利益を上げようとしたら、君のシステムを反転させ、支持線を割った時に同じ銘柄を今度は売らなければならないかもしれない。シミュレーションと実際の資金を使って君のシステムをテストすることでかなり勉強になるよ。君はまず勝率と、平均的利益額と損失額についての考え方をはっきりさせなくちゃならない」

 

新米トレーダーはレストランに入ったときに抱いていた自信がみるみるしおれていくのを感じた。なぜ取引がそんなに複雑でなきゃならないんだ?彼は金持ちトレーダーからレッスンを受けて食欲が全く失せてしまった。

失望が肩に重くのしかかる。彼は取引システムを作ることが単なる始まりに過ぎないなどと予想もしていなかった。宿題をようやく終えて、もう研究もしなくていいとばかり思っていたのに。

金持ちトレーダーとの会合は、今回もこれまでとほとんど変わりがなかったようだ。彼は自信に満ちてやってきて、打ちのめされてとぼとぼ帰る。

「では、僕の次の課題は取引システムのテストと調整なんですね?」

新米トレーダーはしぼんだ自尊心を隠そうとして尋ねた。

「そうだ。君の取引システムは確固とした原則に基づいているよ。しかし、できるかぎり定量化して精査しなければならない。実際の取引でどのようなパフォーマンスを見せるか記録しなければならない。

もっとも重要なのは、その取引システムを計画通り運用するに当たっての自分自身の自制心と自信のほどを確認しなきゃならない」

パンケーキを一口食べながら、金持ちトレーダーはそう話した。

 

「もちろん、そうしますよ!」

いかにもわかっているという調子で新米トレーダーは答えた。金持ちトレーダーは面白そうに微笑んで、片方の眉をくいっと上げた。

「これも強くお勧めしておくが、取引日誌をつけておくことだ。取引を始める前と後にそれぞれ書くんだよ。

自分の取引システムとプランに従って適切なタイミングで売り買いしようとした時に、自分の能力に問題を感じたら全てを記録しておくんだ。慢心や、欲望や恐怖といった感情が取引に影響を及ぼさないように常に見張るんだ。

退屈というものは、利益よりもアクションを起こすことを求めさせるという点で、良いトレーダーを悪いトレーダーへと変えかねない。取引日誌は、自分自身がどうなのかトレーダーに教える先生のようなものだ」

 

新米トレーダーは、そんなことをしても時間の無駄だと口ごたえしそうになったのをあわてて飲み込んだ。金持ちトレーダーは親身になって自分のことを考えてくれているし、自分を誤った方向に導いたことなどないことはわかっていた。

それに、新米トレーダーは言われたことをやらないために、またバカみたいな目にあうのはごめんだった。

「取引日誌をつけると、何がわかるんでしょうか?」

「パターンさ」

「どんなパターンですか?」

「君が行った良い取引と悪い取引の原因が何だったかのパターンさ。君が何を考えていて、取引プランに反するようなことをさせたのが何だったのか。

あるいはまた、何が君に一番当たった取引を可能にさせたのか。君の取引システムがうまく行ったのが午前中の取引なのか、あるいは引けまでの2時間なのかといったパターンもわかるかも知れない。

取引日誌には、実際の取引の情報だけでなく、その時の雰囲気や気分、目標としたことや、できるなら売買ポイントを記したチャートなども一緒に、できるかぎりの情報を詰め込んでおかなければならないよ」

「そうします」

 

新米トレーダーはパンケーキの最後のひとかけらをつまんだ。大好物のパンケーキにちっとも食欲がわかないというのは、十分、不安な要素だった。

「他にも何か知っておかなければならない重要な教えはありますか?」

新米トレーダーはすっかり落胆しながら、それでも希望の欠片を探すように尋ねた。

「常に謙虚さを失わないことだ。株式市場は完全にマスターするには大きすぎることを知るべきだ。自分自身について学ぶこと、市場について学ぶこと、それからリスクについて学ぶことをやめてはならない」

金持ちトレーダーはそう話すと、新米トレーダーに尋ねた。

「これまで投資に関する本を何冊読んだかね?」

「10冊です」

それが失望を誘うような数ではないことを祈りつつ、新米トレーダーは答えた。

「ほとんどの優れたトレーダーは何百冊と読んでいるよ」

そう金持ちトレーダーは答え、新米トレーダーはため息をついた。なんとなく予想はしていたことだったが。

「毎日、どれくらいの時間、チャートを見るのかな?」

「注文を入れる前の何分間かです……」

新米トレーダーは恥ずかしそうに答えた。これが模範的な回答でないことは彼も知っていた。

「偉大なトレーダーたちは、支持線や抵抗線、トレンドを探って毎日、何時間もチャートで勉強するよ」

 

金持ちトレーダーは生徒に優しく諭す諭すように教えた。

「偉大なトレーダーたちは人生をかけて学び続けるんだ。私のアドバイスは、常に市場の生徒であれというものだよ。毎晩、ベッドに入るときには、朝起きたときよりも市場についてより理解を深めて眠りに落ちるんだ。

一生懸命勉強し、経験し、集中することで、君はいつの日か使った時間を全てお金に換えていけると思う」