#13 【クロノスの商人が教える】新米トレーダーはストレスから誤った判断をする

クロノスの商人(@ChronoMerchant)です。この記事では、新人トレーダー物語風にトレードの流れや注意点などを書いています。

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新米トレーダーはストレスから誤った判断をする。金持ちトレーダーはストレスを管理できる。

 

 

新米トレーダーは朝からずっと株価を見続けていた。

その銘柄の株価は9・25ドルから9・55ドルへ上がり、そこから9・45ドルへと下がっていた。彼は出来高の数値が刻一刻、増えていく様子を眺めているのがたまらなく好きだった。

ディスプレイ上で、彼の注目する銘柄の株価が上昇を示す鮮やかな緑色に光り、その他の銘柄が下落を示す赤色で光っているのを見るのは実に気分がよい。

ダウ工業株30種平均は赤色。ナスダック総合指数はわずか0・1%上昇で、かろうじて緑色にしがみついている。

その株価は今、9・40ドルになった。さあ、準備はできた。彼は1,000株買おうと考えた。彼の証券口座には1万ドルがある。この銘柄は、今後2ヵ月のうちに、優に12・00ドルに達するだろう。それで2,600ドルの儲けになるのだ。

 

 

彼は株価が9・25ドルになったところで参入を決めた。

というのも、この株は9・00ドルに強力な支持線があり、何週間もこれを下回ったことがなかったのだ。過去に、9・03ドルまで落ちたことがあったが、その時は9・00ドルに達する前に出来高をともなって反発した。

そして、高値は9・89ドルだが、それが過去最高値で、そこで失速してしまった。株価が9・30ドルに下落し、さらに9・25ドルへ落ちるのを見て、新米トレーダーの胸は興奮に高鳴った。

彼は素早く注文画面で銘柄コードを入力すると、取引数量に1,000と打ち込んだ。心臓をバクバクさせながら、続いて彼はマウスを操作して残高照会の画面へとクリックした。

画面に表示されたのは、「9・35ドルだって!?」新米トレーダーはショックで叫び声を上げた。あわててリアルタイム株価ストリーマーをチェックする。

 

 

彼は血が凍る思いがした。株価は9・10ドルになっていた。

新米トレーダーは気分が悪くなった。

「お……おれはたった今、250ドルを失った!?週末ぶっ続けでピザ配達のバイトをして、やっと貯まる金額だぞ」

彼はうめいた。恐怖心で胃がぐっとせり上がってくる気分だった。心臓がバクバク鳴っているが、今回は興奮からではなく、恐怖心からだった。

 

もう一度、株価を見る。

日中の最高値、最安値を見ると、株価は9・08ドルまで落ちていたことがわかる。今は9・15ドルだ。彼は落ち着こうと自分に言い聞かせた。

「9・00ドルで下げ止まるはずだ。それから反転して、決算発表前には12・00ドルに上がるはず。いい値段で買いを入れたんだ」

バーチャル口座での試験的取引とは話が違う。今回のは彼の虎の子の資金なのだ。

1セント1セントが彼の血と汗と涙の結晶なのに、それがこんな形で250ドルかっさらわれることになろうとは……。まるで、強盗にでもあったみたいじゃないか。

どうして計画通りに行かないのだろう?このプレッシャー、ストレス、恐怖は彼が今まで経験したことのないものだった。こんなわずかな株価の下落なのに。

彼が自分を取り戻そうとしているうちに、株価はするすると9・40ドルへと値を戻した。これで、逆に50ドル利益が出ていることになっているにも関わらず、彼は落ち着きを取り戻すことができなかった。

 

 

彼はいまだに恐怖に取り憑かれており、すぐに利食いするべきか、最初に計画したとおり決算発表の時期まで4週間にわたって保持するべきか、ぐずぐずと迷った。

まるで、彼の資金1セント1セントが安全ネットなしの綱渡りをしているのを逐一、実感できるようだった。彼の1万ドルが今にも忘却のふちに転げ落ちる可能性があるかのようだ。

このようなリアルな危険をこれまで一度たりとも経験したことがなかったので、彼はこの状況をどう解釈してよいかわからなかった。

新米トレーダーは震える手で彼の師匠に電話をかけた。相手が受話器を取るまでの3度の呼び出し音がまるで拷問のようだった。

「もしもし?」

新米トレーダーは急に恥ずかしくなった。金持ちトレーダーにとっては、彼の反応は明らかにバカバカしく感じられるに違いない。

 

 

それでも、新米トレーダーは声を振り絞った。

「今日、初めての取引をしました」

一瞬の沈黙。あの面白がるような笑みをきっと浮かべているに違いないと新米トレーダーは思った。

「それはよかったじゃないか……」

「取引しているときに感じるストレスをどうやってコントロールしているんですか?」

堰を切ったように早口でまくし立ててしまったが、金持ち金持ちトレーダーはかろうじて聞き取ってくれたようだ。電話の向こうからクスクスと忍び笑いが聞こえ、新米トレーダーはイライラを募らせた。

──なぜ彼はこんなに落ち着いていられるんだ!?

 

 

「ほとんどのストレスは、不確定要素によって引き起こされる。失うことへの恐れとかトレンドの不透明感とか、金を作る必要性に迫られているとかね。

時折、トレーダーは取引に対する執着で自分のエゴを包み込んでしまい、当てなきゃならないという思いで自尊心が覆いつくされてしまう」

「だけど、どうやってストレスをコントロールするんですか?」

新米トレーダーは我慢できず口を挟んだ。

 

「取引からできる限りの不確定要素を排除することで、ストレスのレベルを制限することができる。君は取引を始める前に、自分の取引プランをよく知っておかなければならない。

どの銘柄を買うか、ウォッチリストはもう作ってあるだろう?取引の前に、どの銘柄はどの数量で取引するべきなのかを決めておかなければならない」

金持ちトレーダーは咳払いをしてからこう続けた。

「さらに、注文を入れる前に、いつ、どうやって、なぜそのタイミングで利食いするのか、あるいは損切りするのかという出口戦略を練っておかなければならない。

ある一定のパーセントで損失を出した場合だとか、支持線を割った時とか、トレンドが変わったタイミングとか、いずれにせよ仕切る計画を作っておかなければならないのだ」

「それはまあ、確かにその通りですが……」

「全てのトレーダーはストレスを感じる。それは他の職業でも同じことで、ストレスを管理しなければならない。

取引プランを作ったうえで、それでもストレスのレベルが過剰だというのなら、君は明らかに過大な量で取引をしているか、もしくは自分の取引システムにそれほど信頼を置いていないかのどちらかだ。

もし、取引システムが長期的に勝てるものだというのなら、取引量を半分にしてみたらいい。1,000株がストレスだというのなら、500株にしてみたらどうかね」

「しかし……」

そう新米トレーダーは言いかけたが、話を最後まで聞こうとすぐに口をつぐんだ。

「それでもまだ参ってしまうのなら、400株、300株と取引する単位を落としていくんだ。

もし、君のストレスが取引システムを信頼していないことに端を発するというのなら、そのシステムを検証しなおさなきゃならない。

君の取引システムがどんなものなのか、その複雑さにもよるが、パソコンのプログラムを使うかチャートを使って過去のデータ上の売買シグナルを検証しなければならないだろうね。

シミュレーションソフトを使って、実際に売買シグナルのポイントでバーチャル取引を検証してみるのもいい。

統計的な勝ち負けの比率がリアルに肌で感じられるには、少なくとも異なるタイプの株式市場で30以上の取引をしてみなくちゃだめだろうな」

「つまり、まずは取引システムに従って取引しなければならないんですね。それから、取引して適度だと思えるような取引プランをデザインすること。

自分の投資戦略に自信を持ち、ストレスを制御できるように、取引システムがうまく行くものなのかどうかテストする必要があって、それでもプレッシャーが強すぎると感じるのなら、適度に感じられるまでシンプルに取引量を減らしていけばいいということですね」

「その通り。君がコントロールできる範囲内で出てくるパラメーターをどう使うのか、そのプランが必要だ。ストップロスや、トレイリング・ストップ(注文方法の一つで、逆指値注文に自動の追跡(trail)機能を加えたもの。

株価の変動に伴い自動で指値価格が変わる。全ての証券会社が対応している方法ではない。出来高の数値、タイミング、テクニカル指標などの要素をどう使うかだ。

また、取引している銘柄のボラティリティも適当と思える範囲内なのかどうか考慮しなければならない。トレーダーにはそれぞれ個性に合致した取引スタイルが必要だ。

アグレッシブなタイプは、潜在的に大幅な上昇可能性のある銘柄を好むし、そうでないタイプは価格にわかりやすい支持線と抵抗線が見て取れる安定株を好むかもしれない。

デイトレーディングを好む人もいるし、一か月間で数回、保有銘柄の数量調整をする程度といったシステムを好むトレーダーもいるだろう。重要なのは、君が適度と思えるシステムであること、そして利益が上がるということだ。

耐えられないくらいストレスを感じるのなら、問題は自分の取引システムに対する信頼性の欠如か、もしくは自分の知識や能力に対する自信の無さだ。さもなければ、単純に大きすぎる取引量で売買しているということになる

「なるほど……。なんだか、ご自分の経験から話しているようですね」

 

 

金持ちトレーダーはまた笑った。新米トレーダーは言った。

「よくわかりました。またお時間をいただいてしまって、ありがとうございました」

「いやいや、礼には及ばんよ」

金持ちトレーダーは答えた。

今や新米トレーダーはかなり相場に対する理解が進んだように感じた。1,000株というのは明らかに彼にとっては大きすぎたのだ。

何をすればよいのか、彼にはよくわかった。